
はじめに
近年、世界的な脱炭素化と電動化の波に伴い、コバルトの需要は急速に拡大しています。その結果、価格の高騰が顕著となり、特に2024年末から2025年にかけては歴史的な高値を更新しました。
本記事では、コバルトの基礎知識から価格高騰の背景、仕入れ現場への影響、今後の価格動向までを詳しく解説するとともに、高価買取のポイントも紹介します。金属販売業者や製造業の調達担当者の方々、さらには投資を考える方にとっても役立つ情報をお届けします。
コバルトとは?その特性と用途
コバルト(元素記号Co、原子番号27)は、銀白色の硬い金属で、独特の物理的・化学的特性を持っています。常温では安定しており、酸化や腐食に強い耐性を備えています。さらに磁性もあるため、工業的に多様な用途で活用されています。
1-1. コバルトの特性
・耐熱性:高温環境でも物理的性質が保たれるため、航空機エンジンなど高温合金に使われる。
・耐腐食性:海水や酸に対しても強く、特殊な環境下での使用に適している。
・磁性:強力な永久磁石の材料としても重要で、電気モーターや発電機に用いられる。
・化学的安定性:触媒や顔料など化学産業でも欠かせない素材。
1-2. 主な用途
・リチウムイオン電池の正極材
最も注目されている用途で、スマートフォンやノートパソコン、特に電気自動車(EV)のバッテリーに使用される。ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)系正極材は高いエネルギー密度を誇り、電池の性能向上に寄与。
・高温合金
航空宇宙産業でエンジン部品やタービンに使われる合金の主成分。
・磁石
ネオジム磁石などのレアアース磁石の一部にも含まれ、産業機械や家電製品で不可欠。
・顔料や触媒
陶磁器やガラスの着色剤、化学反応の促進剤としても広く利用されている。
1-3. コバルトの産出国と供給事情
世界のコバルト産出量の約70%以上をコンゴ民主共和国が占めており、これが市場の供給不安定要因の一つになっています。その他、ロシア、オーストラリア、カナダ、フィリピンなども主要な産出国です。
コンゴでは鉱山開発に政治的・社会的な課題が多く、供給リスクが価格高騰の背景に大きく関与しています。
2.コバルト価格高騰の背景
近年のコバルト価格の急激な高騰は、複数の要因が重なり合った結果です。特に2024年末から2025年にかけては、トン当たり50,000ドルを超える高値に達し、市場は大きく揺れ動いています。
2-1. EV市場の急拡大による需要増加
電気自動車(EV)市場は、各国政府の環境規制強化や消費者意識の変化を背景に爆発的に成長しています。EVのバッテリーには高性能なリチウムイオン電池が不可欠であり、その正極材としてコバルトは重要な役割を果たしています。
・コバルトは電池のエネルギー密度や安定性を高めるために必須の成分です。
・特に高級EVや一部のスマートフォンメーカーは、性能向上のためにコバルト含有量を減らす工夫をしつつも完全な代替は難しい状況です。
・世界のEV需要が数年で数倍に膨れ上がったことで、コバルトの消費量も急増しています。
2-2. 供給のほぼ独占状態にあるコンゴ民主共和国の政情不安
世界のコバルト供給量の約70%はコンゴ民主共和国(DRC)から来ています。この地域の政治的不安定さや鉱山労働環境の問題は、安定供給を妨げる大きなリスクとなっています。
・政府の規制変更や武装勢力の鉱山支配による生産停止の可能性。
・労働争議や環境問題による操業停止。
・国際社会からの人権問題指摘による企業の調達リスク回避。
こうした不安定要素が投資家心理を悪化させ、価格のボラティリティを高めています。
2-3. 中国による流通支配と地政学リスク
中国は鉱山権の取得や加工・精錬設備の整備を通じて、コバルトの流通と加工の大部分を支配しています。この状況は下記のリスクを伴います。
・中国政府の政策変動による供給制限リスク。
・米中対立の激化による資源戦略の不透明化。
・世界の供給チェーンの分断可能性。
こうした要因により、投機的な買いも相まって価格高騰が進みました。
2-4. 取引市場の変動と投機マネーの影響
2022年以降、コバルトの先物取引や現物市場では価格の乱高下が激しく、特にLME(ロンドン金属取引所)における取引は流動性の低下や一時停止といった混乱もありました。
・投機的資金の流入が価格を押し上げる一因に。
・市場の不安定さが企業の調達戦略に影響。
2-5. 環境・社会・ガバナンス(ESG)課題の影響
近年、ESG投資や持続可能な調達の重要性が高まっており、特にコンゴでの労働問題や環境負荷が注目されています。
・コバルト鉱山の児童労働問題や過酷な労働環境への批判。
・環境規制の強化による生産コスト上昇。
・サプライチェーン透明化要求の高まり。
これにより、倫理的な調達を目指す企業がコスト増を余儀なくされるケースもあり、市場全体の価格に影響しています。
3.高騰がもたらす仕入れ現場への影響
コバルト価格の高騰は、製造業や流通業をはじめとした仕入れ現場に多大な影響を与えています。特に中小企業や下請け企業では、コスト増加が利益率の圧迫や事業運営の不安定化に直結するため、慎重な対応が求められています。
3-1. 企業のコスト構造と利益率への圧迫
仕入れ価格が高騰すると、原材料コストの上昇により製品単価が上がります。しかし、市場競争が激しい中で、必ずしも価格転嫁がスムーズに行かず、利益率が縮小してしまうケースが多発しています。
・大手メーカーは価格交渉力を持つものの、中小事業者は顧客との価格交渉に苦労しやすい。
・原材料費増が続くことで、経営の安定化が困難に。
・コストカットや生産効率化の努力が必要になるが、技術的・設備的制約もある。
3-2. 在庫管理と調達方法の見直し
価格変動の激しいコバルト市場では、在庫の持ち方や調達タイミングが重要です。多くの企業がリスクヘッジのために在庫を積み増したり、短期調達へシフトしたりと、調達戦略の見直しを迫られています。
・在庫積み増しはキャッシュフローを圧迫し、資金繰りリスクが高まる。
・逆に在庫を減らすと価格高騰時の調達コスト増が避けられない。
・長期契約による安定調達や複数サプライヤーの確保がカギとなる。
3-3. 代替素材の模索と技術開発の促進
価格高騰を受け、企業はコバルトの使用量を減らすための代替技術開発や、他の素材への切り替えを模索しています。
・コバルト含有量を減らした電池材料(コバルトフリー、低コバルト電池)の研究開発が進展中。
・一部製品ではニッケルやマンガンなど他金属への置換が試みられている。
・ただし、高性能化や安定性の面でコバルトは依然重要な位置を占めている。
3-4. サプライチェーンの多様化とリスク管理強化
リスク分散のために、調達先の多様化やサプライチェーンの透明化を図る動きが活発化しています。
・地理的分散による政情リスクの低減。
・調達先の環境・社会的責任(ESG)遵守の確認強化。
・サプライチェーンの追跡技術(ブロックチェーン等)の導入検討。
3-5. 中小企業の厳しい現状と支援の必要性
特に中小規模の製造業や部品加工業者は、価格高騰の影響を直接的に受けやすい立場です。資金力の乏しさから、原材料価格の上昇を吸収しきれず、事業継続に影響が出るケースも見られます。
・資金繰り悪化による生産調整や人員削減の懸念。
・政府や業界団体による支援策・補助金の活用が課題。
・企業間の連携や共同調達によるコスト削減努力も期待される。
3-6. 仕入れ担当者の役割拡大
仕入れ担当者は単なる調達業務だけでなく、価格動向の分析やリスク管理、代替品の検討、サプライヤーとの関係構築まで役割が拡大しています。
・市場情報の収集・分析能力の強化。
・交渉力や契約管理能力の向上。
・持続可能な調達を考慮した意思決定。
このように、コバルト価格の高騰は仕入れ現場に多方面の影響を与え、企業の経営戦略にも大きな変化を促しています。
4.1今後の価格動向と予測
コバルト価格の今後の動向は、多様な要因によって影響を受けます。需要と供給、技術革新、地政学リスク、環境政策などが絡み合い、価格の安定化や変動の可能性を左右しています。以下では、それらのポイントを詳しく解説します。
4-1. 価格上昇を後押しする主な要因
EV(電気自動車)市場の急拡大
世界的な脱炭素化の潮流により、電気自動車の需要は飛躍的に伸びています。EVのバッテリーに使われるリチウムイオン電池の正極材としてコバルトが不可欠であるため、この分野の成長は直接的にコバルト需要を押し上げています。
・特に欧米、中国、インドなどの主要市場でのEV普及が加速。
・2025年以降もEV生産台数の増加が見込まれ、コバルト需要は拡大傾向。
・バッテリー性能向上のための高純度コバルトの需要も高い。
供給不安の継続
世界のコバルト供給の約70%を占めるコンゴ民主共和国では、政治的不安定や治安問題が依然として供給リスクとなっています。これが市場に不確実性をもたらし、価格上昇圧力となっています。
・採掘現場の労働問題や紛争鉱物問題もリスク要因。
・供給の偏在化により、他国やリサイクルによる供給拡大の必要性が増している。
投資マネーの流入
資源価格の高騰を受けて、商品先物市場やETF(上場投資信託)を通じたコバルト関連資産への投資資金が増加しています。これが投機的な買いを呼び込み、短期的な価格変動を激しくしている面もあります。
・市場のボラティリティが高まりやすい状況。
・投資家の動向が価格に影響を与えやすい。
4-2. 価格下落の可能性と抑制要因
コバルトフリーや低コバルト技術の進展
バッテリー技術の進歩により、コバルトの使用量を減らしたり、全く使わない技術が開発されています。これらが実用化・普及すると、コバルトの需要抑制につながる可能性があります。
・ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池の配合比率変更。
・リン酸鉄リチウム(LFP)電池などコバルトを使わない代替電池。
・コストや性能面の課題はあるものの、技術革新が進む。
リサイクル供給の拡大
使用済みリチウムイオン電池からのコバルト回収が進むことで、二次供給源としてのリサイクル材の存在感が増しています。これにより、一次資源への依存を減らし、価格の急騰を緩和する効果が期待されます。
・回収技術の高度化と効率化。
・法規制やリサイクル推進政策による市場拡大。
新規鉱山開発の進捗
アフリカ以外やコンゴ国内での新たな鉱山開発が進められており、中長期的には供給増が見込まれています。ただし、鉱山開発は時間と資金がかかるため、短期的な価格抑制にはつながりにくいのが現状です。
・オーストラリア、カナダ、ロシアなどの資源国での開発。
・環境・社会的な配慮が開発のカギ。
4-3. 価格の中長期予測
・短期(1〜2年):需要急増と供給不安の影響で高値圏での推移が続く可能性が高い。価格変動は依然として大きく、リスク管理が重要。
・中期(3〜5年):代替技術の普及とリサイクル拡大が進み、価格の安定化が期待される。ただし、新規鉱山の稼働状況や地政学リスクの変動次第で波乱も予想される。
・長期(5年以上):世界的な脱炭素化の進展に伴い、コバルト需要は依然として高水準で推移する見込み。代替素材とリサイクルのバランス次第で需給が調整される。
5.コバルトを高価買取してもらうためのポイント
コバルトの価格高騰に伴い、廃材や使用済み製品のコバルトを売却して資金化する動きが活発になっています。高価買取を実現するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておくことが必要です。以下では、業者や個人が買取交渉で有利に立つための具体的な対策を詳しく解説します。
5-1. 素材の純度を保つことが最重要
コバルトの価値はその純度に大きく左右されます。高純度のコバルトは市場での需要が高く、査定額も上がります。一方、不純物が混入していると精錬コストが増大し、買取価格が下がることが多いです。
・精錬や前処理が可能な場合は、あらかじめ純度を向上させておく。
・混合物や異物をできるだけ取り除き、きれいな状態で保管する。
・素材の種類(粉末、板、塊など)ごとに分けておくと査定がスムーズ。
5-2. 適切な仕分けと保管が査定額アップのカギ
混在した素材をそのまま持ち込むと、査定が低くなりがちです。また、保管状態が悪いと劣化や汚損が進み、買取価格に悪影響を及ぼします。
・コバルトを含む素材を他の金属やゴミと分別する。
・湿気や酸化を防ぐために密閉容器や乾燥剤を利用して保管。
・長期間の保管は避け、なるべく早めに売却することを検討。
5-3. 市況に応じた売却タイミングを見極める
コバルト価格は市場の需給バランスや世界情勢に左右されやすいので、売却タイミングも重要です。価格が高騰しているタイミングで売ることで、より高い利益を得ることができます。
・LMEや主要取引所の価格動向を定期的にチェック。
・地政学的リスクや大きなニュースの発表前後は価格が変動しやすい。
・短期売買だけでなく、中長期的な価格動向も見据える。
5-4. 信頼できる専門業者に依頼する
コバルトの査定は専門的な知識と設備が必要です。専門業者に依頼することで、正確な評価が得られ、適正な価格での買取が期待できます。
・複数の業者に見積もりを依頼し、価格とサービス内容を比較。
・査定方法や手数料、契約条件などを事前に確認。
・環境や法規制に対応した適切な処理を行う業者を選ぶ。
5-5. 取引時の注意点とリスク管理
高価買取のためには、取引に関するトラブル回避やリスク管理も欠かせません。
・取引契約書は詳細に確認し、疑問点は事前に解消。
・詐欺や不正取引のリスクがあるため、信頼できる業者とのみ取引。
・法規制(輸出入規制、環境規制など)への適合を確認。
まとめ:コバルト市場は今後どうなる?
近年の電動化・再生可能エネルギーの拡大により、コバルトは極めて重要な資源としての地位を確立しました。その価格高騰は一時的な現象ではなく、構造的な需給ギャップや地政学リスクが複雑に絡み合った結果といえます。ここからは、今後のコバルト市場の動向や、仕入れや買取に関わる方々が考慮すべきポイントを整理します。
6-1. 世界的なEV普及とエネルギー政策が価格を支える
世界各国での脱炭素政策は、EVや再生可能エネルギーへの転換を加速させています。これにより、リチウムイオン電池の需要は今後も増加が見込まれ、その中心材料であるコバルトの需要も引き続き拡大します。特に、発展途上国を中心にEV普及が進むことで、中長期的にコバルト需要は堅調に推移するでしょう。
6-2. 供給面の課題は継続する可能性が高い
コバルトの主要産出国であるコンゴ民主共和国の政治・社会情勢は不安定で、供給リスクが常に存在します。さらに新規鉱山の開発には多大な時間と資金がかかるため、供給の即時拡大は困難です。このため、価格は今後も不安定な動きを見せる可能性があります。
6-3. 技術革新とリサイクルが需給バランスの鍵
近年、コバルトフリーや低コバルト電池の研究が進展しており、将来的にはコバルト依存度の低減が期待されています。また、使用済み電池のリサイクル技術も飛躍的に向上しており、資源循環型社会の実現に向けた動きが加速しています。これらの技術革新は中長期的にコバルトの需要増加を抑制する可能性があり、市場にとって重要な変数となります。
6-4. 仕入れ・調達の戦略的視点が必要に
企業が安定した供給を確保するためには、多角的な調達戦略が求められます。複数国からの供給源確保や代替素材の活用、長期契約の締結など、リスク分散が重要です。また、価格変動リスクを抑えるためのヘッジ戦略や、サプライチェーンの透明性向上も検討課題となります。
6-5. 高価買取に向けた市場環境の整備も進む
一方でコバルトの買取市場も成熟しつつあり、専門業者や買取プラットフォームの拡充が進んでいます。これにより、使用済み製品や廃材のリサイクルが促進され、持続可能な資源活用が期待されます。買取希望者は市場動向を注視し、最適なタイミングと方法での売却を検討すると良いでしょう。
同じ種類の金属スクラップ買取 豆知識
スクラップ価格ドットコムの高価買取の理由
- 高度な分析力で圧倒的な金属の回収率
これが高価買取の大きな理由例え「買取単価」が高くても、抽出した金属の量が少なければ買取価格は低くなります。自社工場の最新機器を使用し、精練分析・精製分析によって高い回収率を実現しています。 - 買取から販売まで自社一貫体制
中間コストをカットし買取価格に反映例え「買取単価」が高くても、抽出した金属の量が少なければ買取価格は低くなります。自社工場の最新機器を使用し、精練分析・精製分析によって高い回収率を実現しています。
運営会社情報
商工中金 神戸支店
尼崎信用金庫 神戸東支店
古物証許可(兵庫県公安委員会:第63110100041号)
自動車商(兵庫県公安委員会:第63110100041号)
毒劇物一般販売業(神戸市191TA1023号)
産業廃棄物収集運搬業
飲食店営業許可
酒類販売業許可
貴金属全般(金・銀・プラチナ その他貴金属類)販売買取業
非鉄金属全般(アルミ・銅・ステンレス・真鍮 鉛 錫 その他非鉄金属類)販売買取業
レアメタル全般(ニッケル・コバルト・チタン タングステン 超硬 その他レアメタル類)販売買取業
貴金属地金販売買取業
宝飾品・ジュエリー販売買取業
アンティークコイン販売買取業
アンティーク家具・雑貨輸入販売業
ビンテージオートバイ・ビンテージカー輸入販売業
歯科用貴金属材料買取業
毒劇物一般販売業
カフェ・レストラン・バー等の飲食店の経営
1940年代 | 個人商店(新崎商店)として、新崎真悟が金属リサイクル事業を開始。 |
2002年 | 新たにレアメタルの取り扱いを開始。現代表 新崎 哲雄が有限会社エスアールシーを設立。 |
2005年 | 事業拡大に伴い、株式会社へ組織変更。 |
2007年 | 新たに貴金属リサイクル事業・地金取り扱いを開始。貴金属事業部:神戸ゴールドバンク発足。 |
2010年 | 超硬リサイクル事業部(超硬ドットコム)サービス開始。 |
2013年 | ニッケルコバルトリサイクル事業部(ニコニコメタル)サービス開始。 事業拡大のため、六甲アイランドに事業用地を取得。六甲アイランドベース開設。 |
2018年 | アンティーク家具・雑貨事業部(Kobe Antique Warehouse)サービス開始。 レアウイスキー、クラフトビール販売サービス開始。 |
2019年 | 歯科金属リサイクル事業部(シカキン)サービス開始。 |
2021年 | 本社を芦屋市公光町へ移転。春からビンテージウイスキー販売事業開始予定 |
鉄鋼ビルディング4階 S-07